
七五三というと、お祝いを迎えるお子様だけが着物を着るイメージがあるかもしれません。
しかし、七五三はお子様の成長を家族みんなで祝い、これからの健やかな成長を願う日本の伝統行事です。
せっかくの機会に、お母様やお父様、お祖母様、お祖父様、兄弟姉妹も一緒に着物を着てみてはいかがでしょうか?
この記事では、七五三でご家族が着る着物について、出張着付け師の視点からご紹介します。
七五三は家族みんなでお祝いする行事
七五三のお祝いに、ご家族全員で着物を着る。
それは、お子様の大切な節目に衣装を整え、お祝いの気持ちと敬意を表すことでもあります。
日本の伝統的な通過儀礼において、着物ほどその場にふさわしい衣装はありません。
また、お子様だけが着物を着る場合、
「どうして僕だけ着物を着るの?」
「どうして私だけいつもと違う服なの?」
と疑問を持ち、着るのを嫌がることもあります。
そんなとき、ご家族も一緒に着物を着ることで、
「今日はみんなで着物を着てお祝いする日なんだ」と、お子様にも受け入れてもらいやすくなります。
家族全員で着物を着られる機会は、人生の中でもそれほど多くありません。
最近では、七五三にお母様だけでなく、お父様やお祖父様、兄弟姉妹も着物を着るご家庭が増えています。
ご家族みんなで着物をまとい、日本の伝統文化に触れながら、ご家族の中に日本のアイデンティティを育ててみませんか?
お母様やお祖母様におすすめの着物
七五三は、お子様の成長を祝う日です。
同時に、ここまでお子様を育ててきたお母様やご家族にとっても、大切な節目の日だと私は思っています。
「お子様が主役だから、お母様は目立たないように控えめにしなければならない」と考えすぎる必要はありません。
これまで頑張ってきたお母様が、お着物を着て、晴れやかな気持ちで七五三を迎えることも、この日の大切な意味の一つです。
紬などの、いわゆる織りの着物は普段着としての性格が強いため、七五三のお祝いでは、染めの着物がおすすめです。
当店「出張着付け きものしいな」のお客様の着用例でご紹介いたします。
小紋


小紋は、着物全体に同じ模様が繰り返し入っている着物です。
小紋の中でも、花柄や古典柄などの上品で華やかな柄であれば、七五三にも合わせられます。
一方、縞柄や幾何学模様など、普段着らしい印象が強いものは、七五三のお祝いにはあまりおすすめしていません。
小紋を選ぶ場合は、柄だけでなく、合わせる帯や小物も含めて、お祝いらしい装いになるように整えましょう。
色無地

色無地は、黒以外の一色で染められた、柄のない着物です。
すっきりと上品な印象になり、お子様の着物を引き立ててくれます。
ご実家にお着物がある人であれば、背中の襟の下の真ん中に紋が入っているお着物がある可能性が高いです。
紋の有無や合わせる帯によって格が変わりますが、袋帯を合わせれば、七五三をはじめ、入学式や卒業式など、お子様の通過儀礼にも着用しやすい着物です。
訪問着・付け下げ

七五三のお母様やお祖母様に、最もおすすめしやすいのが訪問着や付け下げです。
訪問着は、肩から胸、袖、裾にかけて、縫い目をまたぐように模様が続いている華やかな着物です。
付け下げは、訪問着よりもやや控えめな柄付けですが、袋帯を合わせることで、七五三のお祝いにもふさわしい装いになります。
これからレンタルや購入をする場合は、訪問着を選ぶと使いやすいでしょう。
訪問着は、七五三だけでなく、
・入園式、入学式
・卒園式、卒業式
・成人式の前撮りやお祝い
・結婚式
・お宮参り
など、
今後のお子様の通過儀礼やご家族のお祝いにも着用できます。
色留袖


色留袖は、黒以外の地色で、上半身には柄がなく、裾に模様が描かれている着物です。
紋の数によって格が異なりますが、訪問着よりも格の高い着物として扱われることがあります。
もちろん、七五三でも着用できます。
一般的には、一つ紋(背中の衿下の中央)または、三つ紋(背中に一つ、両後ろ袖に一つずつ)が使いやすく、
ご購入の際は三つ紋ぐらいまですと、親戚としての結婚式への出席にも使えておすすめです。
黒留袖

黒留袖は、黒地に(一般的には)五つ紋が入り、裾に模様が描かれた格の高い礼装です。
結婚式では、新郎新婦のお母様や近いご親族が着用することが多いため、「黒留袖は結婚式で着るもの」という印象を持つ方も多いかもしれません。
しかし、七五三で着用してはいけないわけではありません。
「母が結婚するときに持たせてくれた黒留袖に、一度は袖を通したい」
「お手持ちの着物が黒留袖しかない」
「黒留袖の凛とした、かっこいい雰囲気が好き」
そのようなお気持ちがあるなら、ぜひ着てください。
ご自身にとって思い入れのある黒留袖を着ることで、お母様にとっても、ご家族にとっても、より特別な一日になるのではないでしょうか。
着物の文様に込められた願い
着物や帯には、さまざまな文様が描かれています。
特に訪問着や留袖、袋帯には、縁起のよい吉祥文様が多く使われています。
「学問を身につけ、賢く成長できますように」
「いつまでも健康で、長寿でありますように」
「立派に成長し、社会で活躍できますように」
着物に描かれた文様には、お母様やお祖母様から、お子様やお孫様への願いを重ねることができます。
その文様に身を包んで七五三をお祝いすることは、ただ華やかな着物を着るだけではありません。
着ること自体が、お子様の成長を寿ぎ、言葉にしきれない願いや祈りを伝えることにつながります。
文様に思いを託し、装いを通して大切な人の幸せを願う。
着物は、そんな奥ゆかしい日本人の心が込められた伝統衣装なのです。
帯の選び方
袋帯を合わせるのがおすすめです。
袋帯は、金糸や銀糸を使ったもの、吉祥文様や古典柄など、お祝いの場にふさわしい柄がおすすめ。
基本の帯結びは、二重太鼓です。
二重太鼓には「喜びが重なる」という意味もあり、お祝いの場で広く結ばれています。
二重太鼓以外にも、お太鼓の形を基本とした上品な変わり結びも素敵です。
名古屋帯を合わせる場合は、金糸や銀糸が使われた華やかなものなど、お祝いらしい柄を選びましょう。
浴衣に合わせるような半幅帯や兵児帯は、七五三のお母様やお祖母様の装いにはおすすめしません。
半衿・帯揚げ・帯締め・重ね衿
半衿は、基本的には白がおすすめです。
白地や淡い地色に、白、金、銀などの刺繍が入った半衿も、お祝いらしく華やかです。
小紋や色無地、訪問着の帯揚げや帯締めは、着物と帯に調和する色を選びます。
喪服用の黒一色の帯揚げや帯締めなど、弔事用の小物は避けましょう。
なお、小紋や色無地、訪問着には重ね衿を付けて衿元を華やかにすることができます。
レンタル品では、付属することが多いです。
重ね衿は、必ずつけなくてはいけないものではありません。衿元をすっきり見せたい場合は、なくても構いません。お好みで決めてください。
色留袖や黒留袖の場合、一般的には、帯揚げは白、帯締めは白または金銀を用います。
地方によっては必ずしもそうではないようです。
また、比翼が付いているため、通常は重ね衿を付けません。
足袋と草履
足袋は、白足袋が基本です。
色足袋や柄足袋がすべていけないわけではありませんが、特に濃い色の足袋は普段着の印象が強くなりやすいため、七五三には白足袋がおすすめです。
草履は、金、銀、白、ベージュ、淡い色合いなど、着物や帯に調和するものを選びましょう。
長時間の参拝やロケーション撮影では、鼻緒がきつい草履や、サイズが合わない草履は足が痛くなることがあります。
事前に一度履いて、歩きやすさを確認しておくと安心です。
▶痛くない!草履の選び方

お父様やお祖父様におすすめの着物
最近では、七五三でお父様やお祖父様が着物を着る姿も多く見かけるようになりました。
男性が着物を着ると、ご家族全体の装いが整い、家族写真にも特別感が生まれます。
男性が着物を着る機会は、今ではそれほど多くありません。
七五三をきっかけに、初めて着物を着るお父様や、
「着物を着るのは、自分の七五三以来です」
というお父様もいらっしゃいます。
せっかくのハレの日です。
お子様だけでなく、お父様も一緒に着物に袖を通し、ご家族で着物を楽しんでみませんか?
着物に羽織を合わせるスタイル

七五三でよくお見かけするのは、袴をはかず、男性用の着物に角帯を締め、その上から羽織を羽織るスタイルです。
着物と羽織が同じ生地や色柄でそろっているものは、「アンサンブル」や「お対」と呼ばれます。
もともとは礼装というより、日常のお出掛けにも用いられてきた装いです。
しかし最近では、お宮参り、七五三、入学式、卒業式など、ご家族のお祝いで着用する方も増えています。
男性着物の丈選び
女性の着物は、腰の位置でおはしょりを作って着丈を調節します。
一方、男性の着物は、基本的にはおはしょりを作らず、対丈で着用します。
そのため、レンタルするときは、ご本人の身長に合った着丈のものを選ぶことが大切です。
着付け師としては、多少長い着物を着付けで調節する方法もありますが、ご自身で行うのは簡単ではありません。
レンタルのサイズ表を確認し、身長だけでなく、裄丈や体格も含めて、できるだけ身体に合ったサイズを選びましょう。
ジャストサイズの丈がない場合は、短い方を選んだ方が着やすいです。
自分で着られる場合の注意点
最近では、ワンタッチ式の角帯が付いた「自分で着られる男性着物」のレンタル商品も増えています。
ただし、着物を着た経験がない方が当日に初めて着ようとすると、
・衿元が大きく開く
・帯の位置がだんだん高くなる
など、着姿が整わないことがあります。
特に痩せ型の方は、補正をせずに着ると帯が上がりやすく、腰ではなくウエストの位置に帯が締まってしまうことがあります。
実は、着物に慣れてる方は、自分に合った着物を補正無しで着ています。
帯が上がってきてもその都度直せますが、着慣れていない方には難しいものです。
ご自身で着る予定の場合は、必ず事前に一度、着物から帯を結ぶ所まで着てみましょう。
難しいと感じた場合は、当日になって慌てないよう、早めに着付け師へ依頼することをおすすめします。
紋付羽織袴

お父様やお祖父様の紋付羽織袴姿は、華やかで格好よく、七五三のお祝いにも特別感を与えてくれます。
特に五歳のお祝いでは、お子様も羽織袴を着るため、子、父、祖父で同じ羽織袴姿で並んだ写真は、七五三ならではの一枚になります。
控えめに言って、かっこよすぎです!
五歳のお子様は、慣れない着物や袴を嫌がることがあります。
そんなとき、お父様やお祖父様が先に格好よく羽織袴を着ていると、
「お父さんと同じだね」
「お祖父ちゃんと一緒だね」
と、お子様の気持ちが前向きになることも多いです。
羽織袴は着丈を調節しやすい
袴をはく場合は、着物だけ着るより、着丈を調節しやすくなります。
着物が多少長くても短くても、袴の下で上げてしまうからです。
もちろん、袴の丈が合っていることに越したことはありませんが、袴をはくことで、着物の多少の長短は調節しやすくなります。
着物と羽織をお持ちであれば、サイズに合った袴だけをレンタルするのも一つの方法です。
最近のレンタル袴には、左右に脚が分かれていない、スカート状の行灯袴も多くあります。
行灯袴は脚を動かしやすいため、歩くことの多い神社への参拝や、ロケーション撮影にも向いています。
兄弟姉妹の着物
七五三を迎えるお子様の兄弟姉妹も着物を着ると、家族写真に統一感が生まれます。
しかし、
「赤ちゃんには何を着せたらいいの?」
「10歳の子に着れる着物はあるの?」
そんな疑問にお答えします。
赤ちゃんから二歳頃まで
赤ちゃんや小さなお子様には、袴のような形をした袴ロンパースがあります。
通常の着物よりも着せやすく、おむつ替えもしやすいため、長時間の参拝にも取り入れやすい衣装です。
インターネットショップでも、さまざまな色柄やデザインの袴ロンパースが販売されています。
女の子の着物
三歳頃から五歳頃までは、三歳の七五三と同じような被布姿が着やすく、おすすめです。
帯付きの着物よりも身体への負担が少なく、動きやすいため、小さなお子様にも向いています。
六歳であれば、卒園式用の袴がありますので、そちらを着るのも可愛らしいです。
八歳頃から九歳頃までは、七歳の七五三と同じような帯付きの着物を着られます。
身体の大きさに合わせて、肩上げや腰上げを確認しましょう。
十歳頃には、二分の一成人式で袴姿を選ぶこともできます。
また、その頃から十五歳頃には、十三参り用の振袖があります。
十二歳で小学校の卒業式を控えている場合は、袴姿を選ぶ方法もあります。
十五歳頃からは、ハイジュニアや大人用の着物を着せられるようになります。
男の子の着物
四歳頃までは、被布姿や小さなお子様用の羽織袴があります。
まだ袴を長時間着ることが難しい場合は、動きやすさを優先して被布を選ぶ方法もあります。
六歳頃〜は、
着物と羽織のスタイル(アンサンブル)や、羽織袴のどちらかになります。
七五三を迎える兄弟と一緒に羽織袴を着ることで、兄弟ならではの記念写真を残せます。
二分の一成人式や卒業式、十三参り用の袴も含めて探すと、レンタルでも身体に合うサイズが見つかることがあります。
家族で着物の格をそろえる?
ご家族全員が、まったく同じ格の着物を着なければならないわけではありません。
七五三は格式を競う場ではありませんので、私は、格を細かくそろえることにこだわりすぎなくてもよいと思っています。
それぞれが着たい着物を選んでも、家族全員が着物を着ることで、装いには自然な統一感が生まれます。
洋服と着物が混在する場合と比べても、「家族みんなが着物を着ている」というだけで、写真全体にまとまりが出やすくなります。
そのうえで、さらに統一感や特別感を出したい場合は、次のような組み合わせも素敵です。
・男性は全員、羽織袴
・大人の女性は全員、色違いの色留袖
このように装いをそろえたご家族が並んだら、きっととても華やかで、凛々しく、格好よい家族写真になると思います。
何より大切なのは、格に縛られすぎることではなく、ご家族それぞれが着物を楽しみながら、お子様の成長を一緒にお祝いすることです。
着物で車を運転する場合の注意点
草履や雪駄など、かかとが固定されない履物は、ペダル操作に支障が出るおそれがあります。
警視庁も、サンダルや下駄などを「運転操作に支障をきたすおそれのある履物」の例として挙げています。
着物で車を運転する場合は、草履や雪駄のまま運転せず、運転しやすいスニーカーなどに履き替えましょう。
神社や撮影場所に到着してから、草履や雪駄に履き替えます。
白足袋は汚れが目立つため、靴の中が汚れていないかも事前に確認してください。
家族全員分の着付け時間を考える
家族全員が着物を着る場合は、人数分の着付け時間が必要です。
▶七五三の前撮りや当日のタイムスケジュール例はこちら

ご自宅やご実家のタンスに眠っている着物はありませんか?
着付け師として、これまで多くのお母様、お父様、お祖母様、お祖父様のお支度をしてきて感じるのは、ご自宅やご実家のタンスに眠っている着物が、思っている以上に多いということです。
ご家庭や地域によっては、結婚するときに着物を持たせてもらった方もいらっしゃいます。
女性の訪問着や色無地だけでなく、男性の着物や羽織、袴が残っていることもあります。
けれども、いざ七五三で着ようと思うと、
「この着物は派手すぎないかしら?」
「昔の着物だけれど、今着ても大丈夫?」
と迷うこともあると思います。
女性の着物は、浴衣や紬、振袖、喪服などを除けば、お手持ちの着物を七五三に活用できる場合はとても多いです。
男性の着物も、浴衣以外の、アンサンブルや羽織袴など、サイズや状態が合えば七五三で活用できます。
「七五三には着られないかもしれない」
と決めつけてレンタルを申し込む前に、まずはご自宅やご実家のタンスを確認してみてください。
お母様やお祖母様が着た着物、お父様やお祖父様が着た羽織や袴を、ご家族の新しい節目にもう一度着ることができれば、七五三の一日がさらに特別なものになります。
「出張着付け きもの しいな」では、
女性用、男性用を問わず、着物や帯、羽織、袴などのお写真を拝見し、七五三に着用できるか、必要なものがそろっているか、どのように組み合わせるとよいかについてもご相談を承っています。
お手持ちの着物を生かしたい方、ご家族みんなで着物を着たい方は、ぜひご相談ください。
▶七五三で子どもが着る着物|3歳・5歳・7歳の違いと選び方はこちら

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準備や着物選び、当日の流れ、多摩地域のおすすめ神社など、七五三に役立つ情報をまとめています。
▶ 七五三のお役立ち情報まとめ

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